2007年1月16日 (火)
 2007年新春コンサート―カロリーナ・ドヴォルジャーコヴァ(ソプラノ)

2007年1月16日(火)午後2時~      Salon Collina

暖冬の今日、チェコから来日の二人のアーティストによる新春コンサートを行なった。その一人、イルジー・コレルトはボヘミアの大作曲家マルティヌーの家系に生まれ、カルロヴィヴァリー国際、ヤナーチェック、マルティヌー各コンクール等チェコを代表する選抜大会で次々と優勝して注目を浴び、愛知万博チェコ音楽週間にも出演して好評を博した人。もう一人のカロリーナ・ドヴォルジャーコヴァも同じくプラハ生まれ、1987年第一回「モーツアルトのプラハ」コンクール女声部門第1位を受賞し、90年よりプラハ・モーツアルト歌劇団と契約し、多くの歌劇場に出演しているソプラノ歌手。新年早々、よく知る人たち十数人と肩肘はらずに和やかに聴くコンサートこそサロン・コンサートというにふさわしいだろう。このお二人の芸術性豊かな演奏、独唱に全員が魅入った。

イルジー・コレルト
イルジーの最初の曲はモーツアルトのピアノ・ソナタ イ長調KV331 トルコ行進曲付き清々しく清冽で端麗な調べ、春の扉を優しくノックするような優雅な響きが全曲に流れる。やがて行進曲。小気味よいテンポの、ピォ、ピォ、ピォ。兵隊が勇ましく行進してくるような力強い最後の盛り上り。
次はスメタナの海辺にて。ギラギラと煌く昼間の海を想像させる。強烈に注ぐ昼の太陽がじりじりと焼き尽くす。さらにスークの愛の歌、感動して。休憩後はベートーヴェンのソナタ、月光。窓辺に立ち月を眺めている自分を想像する。深く沈黙する闇に蒼い月。語りかけてくる月光、しんみりと胸に去来する過去。穏やかに諭すように癒してくれる。曲全体がメリハリの効いた海あり山ありの長い鎮魂話に聴こえる。一際強く照り輝く光りで最後をしめくくる。
ユモレスクに続いて最後はマルティヌーの三つのチェコ舞曲。リズミカルで軽快な鐘がなる非日常世界。歯切れの良いパンクチュエーション。人の心を打ち抜く無害の乾いた機関銃の音がした。

カロリーナ・ドヴォルジャーコヴァ
最初の歌はモーツアルトの「フィガロの結婚」よりアリア「ドン・ジョヴァンニ」よりアリア 黒いドレスをまとった長身のカロリーナ。こぶしが効いたとでもいうかその美声には流麗感がある。感情の起伏が声と手つきとなって顕われる。あらゆる声を紡ぎだす清澄な肉体楽器。次はドヴォルジャークの「ジプシーの歌」より<我が祖母の教え給いし歌><弦をととのえて> 「ルサルカ」よりアリア。感情を乗せて紡ぎだす声を聴いていると、口から出てくる金色の毛筆の流れを思わせる。喉がまるで手指となって描いたような声の草書。艶々した太字もあればかすれたような味わいのある細字の部分もある。通りのよい声ははっきりと描いた書のようだった。書に美しさを見つけるように声に隠された感情の粋に美を見つける。「ルサルカ」のアリアは月に祈る姿に見えた。

彼女はかつてイタリア文化会館館長夫人として東京に滞在したことがある。お酒を飲みながら話していると実に示唆に富む話が多い。日本で声楽を教えた経験から、日本人はもっとリラックスして上手下手に関係なく歌うこと自体を楽しまなければならない。技巧的なことを考えるより歌に感情を出すことが先決。何より声に自分の感情を盛ることが肝心という。韓国人はもっと感情が豊か、技巧的に走らず、おどおどせずに歌わねば歌にならない。歌うことがどういうことかよく考えてみることが必要という。まさにその通り、下手でも感情が乗っていれば迫力が違うと思った。

 ( 火 )  2007年新春コンサート―カロリーナ・ドヴォルジャーコヴァ(ソプラノ)