2002年5月12日 (日)
エドソン・エリアス ピアノリサイタル

丸1年ぶりにあのエドソン・エリアスがここに戻ってきた。 今回も類稀なあのプロ中のプロの技を披露してくれた。                         2002年5月12日(日)午後2時~  Salon Collina にて

「弘法、筆を選ばず」というが、ピアニストはピアノを選ぶ。楽器の良し悪しが演奏の質を決めるらしい。エドソン・エリアスはこのサロンの1923年製ニューヨーク・スタインウエイの音色が大好みだ。  多色の厚みのある音を響かせ適度な余韻を残してくれる。このピアノがエドソンの手指に触れると魔力を発揮し、サロン全体が一個のオルゴール、music boxに化ける。譜面どころか譜面台もはずし無念無想で自家薬籠中の名曲を弾く、その時の彼の息吹きとインスピレーションには鬼気迫るものがある。それが彼の指を通じてピアノ弦をゆるがし、観客の耳目を通じて心の琴線をゆるがす。音楽は時間なくして表現できないし、空間なくしても表現できない。音楽は時空 の美に違いない。 時を刻むその音は空間の中で、長く短く、高く低く、強く弱くこだまして音の彫刻 を作る。陰影のはっきりした襞、柔らかくふっくらした肌、均整のとれたポーズ、中に入った魂は清澄、深遠、かつ 重厚で、まるでロダンの「考える人」の魂のよう。
プログラム

モーツアルト: ソナタ KV.333                                                                                                                     ベートーヴェン: ソナタ Op.27-2(月光)                                               ショパン: 三つのノクターン Op.15-3、Op.27-2、Op.32-1  即興曲 No.1 Op.29  幻想即興曲 Op.66  マズルカ Op.17-4 バラード No.1 Op.23

本日の観客の一人から早速e-mail で送られてきた感想を記させて頂こう。 エドソン先生の演奏は昨年のリストのソナタを聴いて衝撃を受けて以来、 1年ぶりでした。(それは作曲者が乗り移ったかのような凄まじい演奏でした。) 先生の、朗々と旋律を歌わせながらも、 決して繊細さを失わない演奏に 今回もまた感動いたしました。恐ろしいくらいの強烈なフォルティッシモ、本当に悲しくなってしまうほど美しいピアニッシモ、ピアノ自身が呼吸して いるのではないかと錯覚してしまうようなフレージング・・・。 5月の爽やかさを彷彿とさせる冒頭のモーツァルト、一転して陰影に満ちた暗く、 自分自身に問いかけるかのようなベートーヴェン、後半の数々のショパン、 特にト短調の夜想曲と、即興曲が印象に残っています。また、怒涛のような ショパンのバラードの後、それを慰めてくれるかのような、アンコールでの美しい モーツァルト、リズミカルで活気に満ちたベートーヴェンの終楽章、華やかなヴィラ=ロボスの「赤ちゃんの一族」、思い出したらきりがありません。また、エドソン先生のような素晴らしい芸術家に、社会人で一介のアマチュアが レッスンを受けさせていただいたことは、分不相応と重々わかっているつもり ですが、受けさせていただいて本当に良かったと思っております。 先生が私の演奏に対して拍子を取りながらコーチしている時、自分でもびっくり する くらい演奏が変わっているのに気づきました。先生の場合、もちろん言葉 での指摘も的確なのですが、拍子を(というか指揮に近いものなのですが) 取っていただくと、先生のエネルギーがこちらにも伝わって きて、体で感じることが 出来ました。「同じオーケストラでも指揮者が変われば、演奏まで全く変わってしまう」と言うことをよく耳にしますが、それはこのことを言っているのではないで しょうか?ーー中略ーー     精神的に、「贅沢な」1日を過ごさせていただきました。  私はまだ半人前のサラリーマンですが、また明日から仕事に頑張りたいと思います。  本当にありがとうございました。

最後にエドソン・エリアスの書き残した感想を記しておこう。

It is a very great pleasure to play here in Salon Collina.  The artist is immediately surrounded by the magic atmosphere created by the Nakanishi family and their friends. Concentration and inspiration are therefore priviledged in this place. It is really a magic spot.  主旨: サロン・コリーナで弾けて大変嬉しい。芸術家はここにくるとすぐさま 中西家族とその友人たちで作る魔力的な雰囲気のとりこになる。  注意が集中しインスピレーションが湧くのもそのお陰で有難い場所だ。  本当に魅力あるところだ。     

 ( 日 ) エドソン・エリアス ピアノリサイタル