2004年3月20日 (土)
ジョセフ・リン(ヴァイオリニスト)ジョイントリサイタル

お彼岸というのに雨で寒い一日、こんな外の悪天候を跳ね除けるかのように内ではホットな音楽の饗宴、共演、競演する姿が見られた。

2004年3月20日(土)14:00~      Salon Collina

ジョセフ・リンの無伴奏ヴァイオリン、曲はイザイ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調作品27「バラード」エルンスト 無伴奏ヴァイオリンのための練習曲第2番「庭の千草」による 演奏会用変奏曲
田舎の好きなジョ君が余暇にここにやってきたので、これを機会に客演をお願いして みた。ハーバード大学で宗教学を専攻したという逸材。新時代を背負うヴァイオリニスト として誉高い。なるほどリンは評価が高いだけのことはある。今日ほど無伴奏ヴァイオリンの 妙味を味わったことはかつてない。イザイの曲に精神性と材質感を、エルンスト の曲に弓と指で引く曲芸を味わった。イザイの曲がゆっくりと丁寧に始まったとき、私は天岩戸が開いて天照大神が現れるのかと思った。神の魂が弾く音にこもっている感じがして濃厚な精神性を見た。実に丁寧に余韻を確かめるがごとく弾く。弓を引くごとに弦がというより私の精神が擦られ、精神の穢れが身体からそぎ落とされる気分になった。このイザイのヴァイオリンソロを聴いて、ふと過ぎったのは 陶磁器の手触り、肌触りであった。特に萩焼か備前焼の色調を備え、鈍く光ながらザラっとし、硬いようで柔らかい風合いを感じるのだった。厚みもあり、ヴァイオリンソロ独自の、甘みの少し混じった幽玄の世界があった。リンが宗教学を学んだことと無関係ではあるまい。エルンストの曲題は「夏の終わりに咲く最後のバラ」でチョッピリ悲しくセンチメンタルだった。日本でこの曲を「庭の千草」というのを知らなかったらしく、説明するとビックリしていた。重厚なイザイを聴いた後だけに特にそう感じたのかもしれない。何故かホッとする安堵感を与えてくれた。左手で弓を丸く弧を描くように忙しく何回も上下さす一方で、右手の指で弦に触れ、ゆっくりと、ポンポンと乾いた音を打ち鳴らす。それが見事な「庭の千草」を奏でている。その両手で作る音の美しさといったらない。百万色の色合いだ。一人で室内楽かオーケストラをやっている感じで心が癒された。アンコール曲は懐かしいアイルランド民謡、ロンドンデリエア、アイルランドの国色、         薄緑を目に浮かべながらうっとりと聴いた。

Joseph Lin’s two solo violin pieces were the best of the sort I had ever  heard.  Ysaye impressed me most in their celestial and palpable qualities. With the eerie lingering sounds, which opened the Ysaye, I felt the sun goddess and imperial ancestress, Amaterasu Omikami in the Shinto tradition appearing at the break of the rock door confining her inside its dark world. Every sound he played conveyed the soul of divinity imbued in it. His bow stroked not only the strings of the fiddle but also my heart and soul to cleanse. When I heard him play, I was reminded of the color and skin quality of folk pottery such as Hagiyaki or Bizenyaki, which is hard and smooth but still soft and harsh to give it warmth and to please my eyes. This is the special world of yugen, an ambience of mystery, darkness, depth, elegance, ambiguity, calm, transience, and sadness, which only solo violin can create. After such a yugen melody, Ernst’s variations or“the last rose in summer” gave me a kind of relief and sentimental feeling. While manipulating the bow on the strings with his right hand, he played“Niwa no Chigusa” very beautifully with his left hand as if he played with an ansemble or orchestra. The sound with its vast spectrum of colors delighted me most. With ”Londonderry air” after St. Patrick Day on March 17 for an encore,  I had a fond dream of my younger days in their green color.

 

 ( 土 ) ジョセフ・リン(ヴァイオリニスト)ジョイントリサイタル