2020年3月9日 (月)
伊藤順一ピアノリサイタル

第4回日本ショパンコンクールで一位を獲得した伊藤順一君の、昨日、Salon Classicで
演奏したオールショパンプログラムに彼の真骨頂を見ると同時にショパンの魅力をたっぷり味わった。
ショパンの魅力を愛人のジョルジュ・サンドがどのように讃えたか、リストの筆から
眺めてみよう。同じような印象を伊藤君の演奏に感じた。中学2年頃にうちのホールで同君が演奏したとき、大人顔負け、只者ではないと思ったことだったが、昨日のSalon Classicでの演奏でそれが証明された。
ショパンは自分の詩情を岩や大理石に刻んだような、どっしりとした表現はしない。その代わりに、作品からあらゆる重さを取り去り、輪郭を拭い、蜃気楼に映る空中楼閣のように大地から切り離して、雲霞のように浮遊させた。この事を知ったサンドはショパンの作品の捉えがたい軽快性にますます惹かれた。ショパンの音楽がこのように霊妙な作用を及ぼすのは、彼の調べの中に、乙女らのはじらいと情熱のひそやかな囁きが感じられるからだ。彼は繊細鋭敏な耳でこの囁きを捉え、象徴的に、しかも誰にも容易にわかるように、音楽に表現した。ショパンは、ポロネーズの乙女達がただよわせている清純な雰囲気の中に充満している、焼き尽くすような情熱の意味を読み取った。優美で、平静で、魅力に溢れた彼女達の整った容姿や動作の陰に、絶え間なく動揺し興奮する心が隠されている有様を見たのだった。

なお、写真左に見える踊りの油絵30号は小生が描いた「華麗なる大ポロネーズ」である。