2009年3月11日 (水)
小林 響 ヴァイオリンリサイタル(ピアノ:碓井俊樹)


2009年3月11日(水) 午後2時~ 
Salon Collina

早春の一日、世界二ヶ所から若い有望な日本人アーティストがサロンにやってきた。ヴァイオリニストの小林 響さんがケベックから、ピアノの碓井俊樹さんがウィーンからである。この二人の物腰や表情を見ていると日本離れし、かつ日本人のよさを残した世界人である。堂々と世界水準を行く二人に日本の頼もしい明るい将来を予見した。

音楽好きのお祖母さんが「響」と命名したという。まさに心身ともにこれ響という響さん。以前ファルクナーというドイツ人ピアニストがhibikiという(i)母音が三つ並んだ響きがいいと言ったがその通りである。一方、俊樹さんもToshiki、もしChishikiなら6つiが並ぶところだった。


演奏に大人の風格を見た。落ち着いた姿勢、持つはガダニーニ(1766年製)、奏でるはベートーヴェンヴァイオリンソナタ第5番ヘ長調作品24「春」。これをベートーヴェンが生きた時代の弓(1825年)トルラで弾いてみせた。当時のサロンに似たこじんまりしたこのサロンでベートーヴェン時代の再現と云わんばかりにベートーヴェンの音そのものを聴かせてくれた。曲は春にふさわしく明るく清々しい。第二楽章の最初、澄み切った弱音でゆっくり優しく弾かれたときは私の心の隅の隅がきれいに洗浄された思いがした。ピアノの音を知り尽くした碓井さんはホールのニューヨークスタインウエイピアノにふさわしい選曲をし、自分と譜面台との隔たりをも計算に入れて弾く。コルンゴルトの空騒ぎ作品11.5はアメリカ的色彩があり、このピアノにピタリという。

2歳からヴァイオリンを始めた響さんは14歳(中三)の時、管弦楽器の冴えでは定評のあるイスラエル・フィルに感銘を受け、いてもたってもおられず一人で同国に渡った人。かたや俊樹さんは東京芸大付属高校から同大学を経てザルツブルク・モーツァルテゥム芸術大学に学び、ゴラン高原で戦場のピアニストとしてボランティア活躍までした人。 これだけからみても二人はすごい。二人の演奏はきらびやかで豊かな色彩を放つ華麗な音で綴ったタペストリーともいえ、静謐さの中の美しさであると同時に、澄明なレイク・ルイーズ(カナダバンフ)の湖上を滑るボートの軌跡にも似て、青深い水(ピアノ)を切って進むボートの白い泡波(ヴァイオリン)のような動的な美しさもあった

              本日のプログラム

ベートーヴェン:  ヴァイオリンソナタ 第5番 ヘ長調 作品24 「春」
クララ・シューマン: 三つのロマンス
ドボルジャーク:  スラブ舞曲集第2集よりスラブ舞曲 第2番 作品72 ホ短調
グリーグ: ヴァイオリンソナタ 第3番 ハ短調 作品45
コルンゴルド:  空騒ぎ 作品11.5
シューベルト:  アヴェマリア
山田耕筰: この道など    (最後に日本歌曲を持ってくるなどなかなかである)

    

 

 

 ( 水 ) 小林 響 ヴァイオリンリサイタル(ピアノ:碓井俊樹)