2015年10月12日 (月)
ショパンの個性について

ドラクロワが描いたショパンの肖像がある。内面を抉り出すかのような迫真の人間像で、眼差しに宿る力、苦悩を寄せた眉間のしわなど素顔のショパンが描かれている。平素からショパンの曲に魅せられている私は、急にその個性が知りたくなった。

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リストのショパン評伝から一部抜粋し要約してみよう。(世界大音楽全集9、河出書房1968)

ショパンの多面的な性格の、限りない襞には清純な感覚と繊細な知性が宿っている。情熱的想像力と強烈な感情を持つショパンは、肉体的には弱々しく病的で苛立ちやすくその苦悩は測り知れない。彼の青い目は夢想的というより知性的でいつも柔和で微笑を絶やさず、鼻は幾分鷲鼻、物静かで上品、身振りは優美で貴族のようである。

彼の芸術観は常に一定していて、好みは青年の日の印象に大きく根差している。彼は自分の魂と共鳴する手本や傑作を古典芸術の中にのみ求め、いかに美しくいかに多くの長所を持った作品でも彼の詩的想念にそぐはないものにはほとんど興味を感じなかった。

ショパンはベートーヴェンの作品を高く評価してはいたが、ある部分は粗雑に感じたし、その逞しすぎる構成は気に入らなかった。その怒りは余りにも狂暴であり、その情熱は余りにも圧倒的過ぎた。至る所に見られる獅子の気魄はショパンには重荷だった。この偉大な天才の雄渾強力な作品の中に織り込まれたラファエル的な天上の美はその激しい突然の対照感によって痛ましく感じられた。

シューベルトの幾つかの旋律には魅力を感じたが、ショパンの洗練された耳には余りにも粗野と感じられるものもあった。苦悩がむき出しにされ苛酷な悲しみに捉われて、肉がおののき骨が鈍い音をたててうち合っているような旋律はショパンの好みではなかった。

ショパンはシェークスピアを愛したが、多くの条件付きだった。その劇中人物は余りに人生に近かすぎ、その言葉は真実であり過ぎる。作品の中でショパンが愛したのは人間性の余りにも惨め過ぎる点に目をそむけ、叙情的要素と叙事的要素がうまく完全に総合されているような作品だった。

ショパンはイタリア芸術の中の露骨平明で、神秘的、知的な魅力に欠けている作品を激しく嫌ったし、またドイツ芸術に見られる力強いが野卑な印象を与えるのも嫌った。

ショパンにとってモーツァルトは理想的な人、優れた詩人であった。それはモーツァルトが他の作曲家と違って容易に美から平俗への坂道を下ってこなかったからである。

ショパンは言外に含まれるすべての陰影を直観や予感や想像で洞察することを好んだ。彼は趣味に従って慎ましく述べるにすぎず、彼の感情の大部分は包み隠され厚いヴェールの下からわずかにその姿を覗かせているだけである。

 

以上からだけでもショパンの個性の大体のところは解ったし、他の作曲者との対比で捉えたショパンの好みがよく解った。そしてなぜ私がショパンが好きなのか、それは私がショパンと性格的に同質性を持っているからであることも分かった。