2017年8月11日 (金)
最近の英語ヒアリング

アメリカ国内放送で私がいつも聞いているのはNPR(National Public Radio)のHourly news(毎時の5分間ニュース)である。このところ北朝鮮のグアムに向けた4発の弾道ミサイル発射計画とそれに対するトランプ大統領の怒り警告でもちきりである。

 

例を挙げると次のようである。

As tensions with North Korea escalate, President Trump received briefing from his security advisers: North Korea threatened this week to fire weapons into the water just off the U.S. territory of Guam.(32語)

この英文の長さと構文は特別に複雑なものではない。これを分速300語で喋るアナウンサーなら5,6秒で喋る。だから、私の耳もそれぐらいの速さで解さなければならない。5分間ニュース全体ではこの文の50倍ぐらいになるから、それだけを理解することになる。

何も見ずに耳を澄ますだけでこの大意を掴まなければならない。それがどうして可能なのだろうか。言語学者のノーム・チョムスキーによれば、人間の脳にはそもそも生まれつき文法を解する能力が備わっている。何語においても同じで日本語の文法であれ英語の文法であれ文法の基本ルールが備わっているからこそどこの幼児でもその言葉が聞け話せるのだという。

われわれは無数のニューロン(神経細胞)をもっている。それは砂みたいなものである。浜辺で砂の城を作るようにニューロンという砂でいろんな物を作る。初めは1センチの小山を作るにも骨が折れた。砂を積んでは崩れまた積む、その繰り返しであった。次第に形をなした山となり、やがてその上に何層もの山を積んで城となる。はじめからそのような城の設計図があるわけではない。試行錯誤を繰り返し、繰り返ししている中に、砂が定着する。Northという単語も一粒の砂ならKoreaもそうである。その二粒がいつも繋がって出てくると脳はそれを一つのセットとして扱うようになる。PresidentとTrumpの関係も同じである。

最初のasも一つの砂だが、これがここに出てくると、いずれ後にそれを受ける砂が出てくると予感させる。Asなど弱く発音され、聞きもらすほどだが、鍛えているうちによく聞こえ、その意味も無意識に覚ってくる。日本語で”しかし”の意味の「が」は弱い発音だが、それを聞くと、その後に何か反対のことが出てくると予感させるのと同じである。

このような文構造が理解できるのは何と言ってもアナウンサーの抑揚とリズムである。波打つような調べである。きちんと止まるところ、全然止まらないところ、その中間体が声の強弱とともにあるから文を脳の中で分節できるのである。これはヒアリングだからこそできる技で文を一人で読んでいる限り、それができないから文意も取れないし、取れても時間が掛る。なれてくればヒアリングの方が読むよりもよく意味がとれるようになる。

以上のようなことは意識でできることではない。無意識がひとりでにやってくれることで、その世話にならずしてヒアリングなどできたものではない。

しかし、無尽蔵にあるはずの無意識でも一瞬にして何事も同時にやれるものではない。

炭鉱夫を思い出す。目の前の固い岩盤(これから読もうとする文)を見詰めてつるはしを下し(無意識で処理し)、削った岩(読み込んだ文)をトロッコに乗せ(短期記憶して)、たまり場(文意記憶場所)に運んで積み上げる(全体の大意をとる)、この作業の全てを一瞬にこなさなければならない。つまり採集(読み取り)と加工(意味検索)と保存(意味保存)を瞬時に行われなければならない。

しかし毎日訓練を重ねるうちに微分的歩みだが、すべての行為がより少ない時間でできるようになる。

ここでおもしろい現象がある。それは月一回びっくりするほどよく解る日があることである。満月の頃だ。月の満ち欠けが引力に関係し人の生理に影響を与えるように、この満月の時は一番引力が高まるので75パーセントも水でできている人間の身体はその影響を受け、この日ばかりはいつもより脳への血液のめぐりがよくなるからだと考えている。いままで水を被ったことのない砂がこの日ばかりは水漬けとなり、それ以後、それも城作りに参加する砂となるみたいである。

ここまでヒアリングが続けられたのはこの月一回のジャンプがあったからで、これが楽しみでやってきた。今までぼやっとして焦点が合わなかったものが、こうして徐々にはっきりとしてくる過程は本当に楽しみなものである。

(2017.8.11)